「変革の半年間」——百年構想リーグを戦った横浜FCを総括する
はじめに:なぜ横浜FCは百年構想リーグを戦ったのか
Jリーグが秋春制へ移行するにあたり、2026年は1月開幕から夏までの半年間だけを戦う特別大会「百年構想リーグ」が実施された。
J2・J3の40クラブはEAST-A、EAST-B、WEST-A、WEST-Bの4グループに分けられ、2回戦総当たりのグループステージ(地域リーグラウンド・全18節)を戦った後、同順位同士が対戦するノックアウト方式のプレーオフラウンドで最終順位を決めるという、通常のシーズンとは大きく異なるレギュレーションだった。昇格も降格もない大会だが、横浜FCにとっては「クラブの新たな歴史の始まり」となる半年間になった。
4度目のJ1残留失敗と抜本改革
横浜FCは2025年、4度目となるJ1残留に挑んだが18位でJ2降格。しかもシーズン途中の7月23日には四方田修平監督を解任し、コーチだった三浦文丈氏を昇格させるという緊急事態も経験した。
三浦体制でも残留は果たせず、三浦監督自身もシーズン終了とともに契約満了でクラブを去った。
過去4度のJ1挑戦を振り返ると、07シーズンは勝点16で最下位、20シーズンはコロナ禍の特例で降格なしの15位、21シーズンは勝点27で最下位降格、23シーズンは残留圏との勝点差4という僅差での降格——2025年もまた、17位との勝点差は前回よりも広がっており、「J1定着」「タイトル獲得」という悲願には手が届かないままだった。
この状況を受け、クラブは抜本的な改革に踏み切る。2025年12月8日、新監督として須藤大輔氏(48歳、神奈川県出身)を招へいすることを発表した。
須藤氏は桐光学園高から東海大学を経て、水戸ホーリーホック、湘南ベルマーレ、ヴァンフォーレ甲府、ヴィッセル神戸、藤枝MYFCで選手としてプレー。
指導者としては山梨学院大学サッカー部コーチ、ガイナーレ鳥取監督(2018年)を経て、2021年7月から2025年まで藤枝MYFCの監督を務めた人物である。
就任コメントで須藤監督は「内容と結果の両極を掴み取る、インプレッシブサッカー」を掲げており、ここ数年の横浜FCとは方向性の異なるサッカーへの転換が図られた。百年構想リーグの半年間は、まさにこの新しいフットボール・フィロソフィをチームに浸透させるための期間だったと言える。
グループステージ(EAST-A):4位で通過
横浜FCは仙台、秋田、湘南、相模原、群馬、山形、栃木SC、栃木シティ、八戸とともにEAST-Aグループに組み込まれた。地域リーグラウンド全18節を終えた最終順位は以下の通り。
| 順位 | クラブ | 勝点 | 試合 | 勝 | 分 | 敗 | 得点 | 失点 | 得失点差 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 仙台 | 43 | 18 | 11 | 5 | 2 | 32 | 15 | +17 |
| 2 | 秋田 | 35 | 18 | 11 | 2 | 5 | 23 | 14 | +9 |
| 3 | 湘南 | 31 | 18 | 8 | 4 | 6 | 25 | 19 | +6 |
| 4 | 横浜FC | 29 | 18 | 8 | 3 | 7 | 34 | 27 | +7 |
| 5 | 相模原 | 28 | 18 | 7 | 5 | 6 | 31 | 33 | -2 |
| 6 | 群馬 | 23 | 18 | 6 | 4 | 8 | 26 | 36 | -10 |
| 7 | 山形 | 22 | 18 | 6 | 2 | 10 | — | — | — |
※分・敗の内訳にはPK勝敗を含む集計方法の違いにより資料間で若干の差異がある場合がある。
得点力は34得点とグループ内トップクラスで、攻撃面での上積みが数字にも表れた。一方で失点も27と多く、守備の安定感は今後の課題として残った格好だ。開幕から数節は5節連続未勝利のような苦しい時期もあったが、終盤にかけて内容が明らかに向上し、最終節前には栃木SC戦などを含む3連勝でグループステージを締めくくった。
プレーオフラウンド:連勝で締めくくり総合13位
グループステージ4位で迎えたプレーオフラウンドは、他グループの同順位クラブとのノックアウト方式。横浜FCは2試合を戦い、いずれも勝利。この結果、J2・J3合計40クラブ中で総合13位という最終順位を手にした。
J1からの降格組としては「13位」という結果に物足りなさを感じるファンもいるだろう。しかし、グループステージ終盤からプレーオフまでを通算すると6連勝でシーズンを終えており、明らかな上昇曲線を描いたままオフシーズンに入れたことは、8月開幕の2026/27シーズンへの好材料と言える。
攻撃陣を支えた得点源
EAST-Aグループの得点ランキングでは、横浜FCから複数の選手が上位に名を連ねた。
- ジョアン・パウロ:6得点(グループ2位タイ)
- アダイウトン:5得点
- 横山暁之:5得点
- 駒沢直哉:4得点
途中出場から決勝点を挙げる場面もあったアダイウトンをはじめ、複数の選手が得点源として機能したことは、須藤体制が目指す攻撃的なサッカーが一定の結果に結びついたことを示している。
クラブ・オブ・ザ・シーズン的な存在——杉田隼
シーズンを彩ったトピックのひとつが、クラブ主催の「百年構想ハマプレアウォード」で杉田隼が大賞に選ばれたことだ。
本人は受賞にあたり「ディフェンスは個人であまり賞をもらえないので、ファン・サポーターの皆さんに選んでもらえて嬉しいです」とコメントしており、守備の要としてチームを支えた選手にファン投票でスポットライトが当たった格好となった。
まとめ——半年間の意味と2026/27シーズンへ
百年構想リーグは昇格・降格のかからない特殊な移行期の大会であり、順位そのものの重みは通常シーズンとは異なる。しかし横浜FCにとっては、
- 4度のJ1残留失敗を受けたクラブの抜本改革(須藤大輔新監督の招へい)
- 「インプレッシブサッカー」という新しい方向性の浸透
- グループステージ4位、プレーオフ2連勝を経ての総合13位というまずまずの滑り出し
- シーズン終盤の6連勝という尻上がりの内容
——という点で、次のJ2シーズンに向けた土台づくりの半年間として一定の手応えを残したと言えるだろう。
8月開幕の2026/27シーズンで、この上昇基調をどこまで継続できるかが、須藤体制の真価が問われる本当の勝負になる。
参考にした主な情報源
- Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp)
- 横浜FC公式サイト(yokohamafc.com)
- HAMABLUE PRESS(タグマ!)
- ゲキサカ(web.gekisaka.jp)
- サッカーキング/サッカーマガジンWEB